伝統の技術を受け継いだ京甲冑と江戸甲冑の魅力とは?
端午の節句に飾る鎧・兜は様式や製法の違いによって、いくつかの種類に分類されますが、その代表格が京甲冑と江戸甲冑です。
京甲冑:貴族社会で生まれた煌びやかな甲冑
京甲冑は京都の貴族社会の中で生まれ発展してきたもので、金属を多用した煌びやかな雰囲気が特徴です。
装飾金具や金箔を随所に施し、龍頭と呼ばれる前立てが兜の中心に取り付けられた京甲冑は、雄々しさと雅な気品を持ち合わせています。
【作品名:平安一水作 金箔押小札 朱赤糸縅 長鍬形兜飾り】
こちらの鎧飾りは上の画像の兜飾りと同じ、平安一水の作品です。
【作品名:平安一水作 京甲冑 鎧10号床飾り 吉徳大光監修】
京甲冑の魅力とは?
きらびやかで繊細な金物細工や純金箔を施した小札板が目を惹く京甲冑は、優雅でありながら力強く、高貴かつ凛々しい雰囲気が魅力です。
<京甲冑師を代表する人気作家>
平安一水、平安武久、粟田口清信、平安光雲
江戸甲冑:武家社会で生まれた渋みのある甲冑
江戸甲冑は武家社会の中で生まれ発展してきたもので、実戦用の甲冑をイメージして作られた重厚かつ力強い雰囲気が特徴です。
戦の場においては過剰な装飾は不要なため、装飾的要素の強い京甲冑と比べると質素で落ち着いた印象を与えます。
しかし、シンプルだからこそ江戸甲冑には洗練された美しさがあり、質実剛健かつ頑強な風合いの中に芸術性の高さがうかがえます。
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⇒ 江戸甲冑の第一人者 加藤一冑作 篠垂付兜飾りセット
こちらの鎧飾りは上の画像の兜飾りと同じ、加藤一冑の作品です。
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⇒ 加藤一冑作 四分の一 赤糸鎧飾りセット
江戸甲冑の魅力とは?
甲州印伝皮を使用した吹返しや漆で塗り固めた和紙小札など、江戸甲冑は天然素材の持ち味を生かした作りが特徴的。質実剛健の気風みなぎる力強さが魅力です。
<江戸甲冑師を代表する人気作家>
加藤一冑、加藤鞆美、加藤峻厳、市川光玉、別所実正、小島辰広
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甲冑の代表格は、ここで紹介した京都スタイルの京甲冑と江戸スタイルの江戸甲冑ですが、人形店ではこのいずれにも属さない鎧・兜を見かけると思います。
京甲冑と江戸甲冑のどちらにも属さないスタイルの鎧・兜って、いったいどんな感じなの?と思いますよね。
簡単に言うと、古い様式にとらわれずデザインを重視して作られた新しいタイプの甲冑で、最近はそれらを総称して「新型甲冑」とも呼んでいるようです。
例えば、パッと見は江戸甲冑のようでも金具飾りを多用しているもの、鍬形や吹返しが独特のデザイン(現代的)になっているもの、プラチナ箔など伝統的な甲冑では見られない素材を使用しているものなどが新型甲冑に該当しますが、とにかく枠が広すぎてひと口に「これが新型甲冑だ」と言うのは難しいと思います。
新型甲冑については明確な定義がないので文章だけでイメージを伝えるのは困難ですが、京甲冑と江戸甲冑がどんなものかをある程度見ておけば、どれが新型甲冑なのかはすぐにわかるはずです。
※これも新型甲冑です↓
ちなみに人形店に行って「京甲冑はありますか?」とか「江戸甲冑はありますか?」と尋ねても通じますが、「新型甲冑はありますか?」と言っても、ほとんどのお店の販売員さんは「???」だと思います。
なぜなら新型甲冑という呼び名は一般的ではなく、実際に私がいくつかの人形店で「新型甲冑は販売してますか?」と尋ねてみたところ、どこの販売員さんも「何ですか?それ?」という顔をしていました。
試しに楽天市場で京甲冑あるいは江戸甲冑と検索すると沢山の商品が表示されますが、新型甲冑と検索しても「ご指定の検索条件に該当する商品はありませんでした。」と表示されるだけです。
誤解のないように言っておきますが、決して人形店で新しいタイプの甲冑や現代的デザインの鎧・兜を販売していないわけではありません。
販売していないどころか、ほとんどのお店が京甲冑や江戸甲冑よりも新しいタイプの甲冑の方が取扱い数は多いくらいです。
つまり、どこの人形店でも現代的デザインの甲冑(鎧や兜)を取り扱ってはいるものの、それを「新型甲冑」と認識して販売していないということです。
多くの人形店では甲冑の分類を「京甲冑」「江戸甲冑」「それ以外」としているようなので、新型甲冑をお店に見に行く場合は注意してくださいね。
なお、京甲冑と江戸甲冑に属さないタイプといえば戦国武将の甲冑を模った商品もあります。
戦国武将の甲冑は特に若い世代からの支持が高く、上杉謙信と伊達政宗の鎧・兜は圧倒的な人気を集めています。
織田信長、真田幸村、徳川家康など他の有名武将たちの甲冑も人気はありますが、商品数では上杉謙信と伊達政宗が群を抜いている感じです。
戦国時代の甲冑は西洋の甲冑技術を取り入れたものも少なくないので、この時代ならではの独特なデザインも数多く見られます。